モンゴルの鉄道はシベリア鉄道と同じロシア規格の1520mmゲージで、北はロシア国境から南の中国国境へ続く南北縦貫線がメインラインだ。ロシアへも中国へも国際列車が運行されているが、モスクワ行の列車は国境駅で機関車を付け替えればそのまま走行できるの対し、中国はゲージが標準軌だから直通する旅客列車は客車の台車を交換している。これは中国側の駅で車体をジャッキアップして入れ替えている。
首都のウランバートルは標高1300mの盆地にあり、南へ勾配を上って行く区間では、急勾配を避けるためにカーブが連続していてΩ状になっているところもある。そのひとつ、ホンホルのカーブは外国からも鉄道ファンが撮影に来る名所になっている。
2017年2月にここを訪れた。午前9時30分、中国から国境を越え、前夜モンゴル南部のザミンウードを出た旅客列車が、終着駅ウランバートルに向けて勾配を下って行った。この左手からΩカーブを通過し終えた場所、ホンホル駅はこの先にある。客車19両の堂々たる編成だ。


10時15分、ホンホルの街を見下ろすと、駅を出た南行貨物列車がΩカーブに向かう直線区間の勾配を上って来た。⇒
  運営しているウランバートル鉄道公社はモンゴル政府とロシア鉄道が資本を半分ずつ保有する合弁企業で、貨物列車の中には中国の港からヨーロッパまで直通するコンテナ専用列車もある。
夏は草原地帯のこの国は、冬は見渡す限りの雪原になる。
  
左の写真の貨物列車がΩカーブに入り、左に方向を変え空車の石炭貨車列を牽いて行った。この列車の編成は短い方だ。
 

 
 
午前11時、ホンホル駅を出た南行サインシャンダ行き旅客列車がΩカーブに向かう直線区間に入って来た。終着駅まで470km余りを10時間近くかけて走る列車だ。⇒

Ωカーブを回り切った列車が目の前を通過していく。牽引機は2ZAGALという重連タイプのディーゼル機関車だ。⇒
  サインシャンダ行きがΩカーブに入って緩い勾配を上っていく。13輌編成。(左下へ)


列車は勾配が続く線路をゆっくり上って行くため、車で先回りして4駅先のホールトの構内外れで待っていると、Sカーブを回って駅に進入して来た。(左下へ)
 

 
サインシャンダ行き列車がホールト駅に入ると、北行の石炭貨物列車が交換待ちをしていた。
旅客列車が出て行った後、先頭の機関車が黒煙を上げて発車し、その巨体がこちらに向かって進んで来た。⇒
(鉄道用地内は許可を得て撮影)
  ホールトを発車した長大な石炭貨物列車が眼前を通過し、先ほどサインシャンダ行き旅客列車が来たSカーブを下って行った。最後尾の貨車が通過した時、先頭の機関車は写真の左端にかすかに見える所まで到達していた。
 

 
15時30分、バヤン駅を出た南行石炭貨物列車が雄大な左カーブを回ってきた。列車が遠くに姿を現すより前にディーゼルエンジンの唸りが聞こえてくるため、それからゆっくりと撮影準備を始めても充分に余裕がある。⇒   カメラを右に向けると上り勾配のSカーブがあり、長い列車は蛇のように左右に身をくねらせながらゆっくりと上って行った。牽引機は現在のウランバートル鉄道の主力である重連型の2TE116YM。
 

 
16時15分、右上の写真と同じ地点で待っていると、北行の貨物列車がSカーブを下ってきた。この貨車には石炭を積んでいる。ウランバートルの火力発電所に燃料を運ぶ重要な使命を帯びた列車だ。  
  Sカーブを往く列車の撮影には3つの要素が不可欠だ。
まずS字形の線路があること、次にS状になるほど長い編成の列車が運転されていること、そして最後にそのアングルで撮影できる場所に撮影者が立てること。
モンゴルにはこの条件が揃った場所がいくつもある。
 
この日、撮影を始めた朝の気温はマイナス24度ぐらいだった。午後になって気温は上がったが、それでもマイナス10度以上にはならなかった。

 
ウランバートル駅の1番ホームの脇に保存されていた蒸機はL-3167というナンバーがキャブに書かれていた。1520mmゲージだから躯体は大きい。   ウランバートル鉄道唯一の気動車はロシア製の2輌編成。レールバスと呼ばれ、北部のダルハンまで280kmを4時間で結び毎日1往復している。
 
 
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モンゴル 雪原を往く長大列車