ドイツ中央部のハルツ山地に、総延長140kmに及ぶ路線網を持つハルツ狭軌鉄道。全て1000mmゲージであるが、列車の運行はヴェルニゲローデからノルトハウゼンまでの南北縦貫線と、その途中から東に分かれてゲルンローデに向かう東西方向の区間とに分かれている。
南北線のドライアンネンホーネから分かれ、急勾配をブロッケン山頂駅に向かう支線は観光鉄道であり、ヴェルニゲローデからブロッケンまでの列車のほとんどを蒸気機関車が牽引している。
その他の区間は地域住民の足としてディーゼルカーが走っているが、わずかに蒸気機関車による列車も運転されている。
1905年に全区間が開業し、1949年からは東独国鉄が運営していたが、東西ドイツの統合後、1993年からハルツ狭軌鉄道会社が運営している。
 
<ハルツ狭軌鉄道発行パンフレットから加工>
     
2000年11月    
 
     
  この鉄道を初めて訪れたのは2000年11月だった。
ドイツ鉄道(DB)の駅もあるヴェルニゲローデ駅を出た列車が、街を抜けて上り勾配区間に入って暫く行くと、森の中で急カーブをほとんど180度回りきったところにシュタイネルネ・レンネという駅がある。ここから続く上り勾配に備えて、機関車は力を振り絞って発車していった。その様子を見下ろす林道は、邪魔になる木が伐採されていて、撮影地点として整備されているようだった。

ドライアンネンホーネに近い場所で待っていると、列車はかなりのスピードで疾走していった。

11月下旬のドイツは日が短く、午後3時半過ぎにドライアンネンホーネを列車が出る頃には夕焼け空になっていた。
     
開業当初から東側の路線はゲルンローデでDBの駅と接続していた。ほとんどの列車がディーゼルカーで運行されていたが、訪問した時は、ここから15km南のアレクシスバートまでを、蒸気機関車が牽く列車が午前中に2往復していた。
午前8時27分にゲルンローデを発車する列車
  峠を越えてアレクシスバートに到着した機関車は、水を補給した後、折り返し列車を牽引してゲルンローデに戻る。帰路は千分の40という急勾配が続く区間を登って行くことになる。
谷間にあるこの駅はまだ日陰で、近くの森にようやく陽が射し始めていた。
 
     
 
この鉄道の主力機関車は1954年から56年にかけて17輌が製造された99型7230〜40番代だ。5軸の動輪は急勾配の多い区間で力を発揮する。全長12.5mは日本の機関車ならC11型に相当するが、牽引力は15%ほど強い。
<ハルツ狭軌鉄道の売店で販売されていたイラストシール>
  ゲルンローデからの区間列車を牽いていたのは1939年製の小型の99型6001号機。この形式はこの1輌だけしか製造されなかった。1956年からゲルンローデの機関区に配置され使用されている。
     
2006年10月    
2006年10月に再びハルツを訪ねてみた。
ヴェルニゲローデの機関区には、機関車を見下ろせる高さの展望所が造ってあった。いかつい風貌の機関車は力の塊のようだ。
  機関区には99型5901号機が止まっていた。この機関車は動輪2軸が前後に2組装備されたマレー式で、1897年アーノルト・ユンク社製というから、この鉄道の創業時に使われていた機関車だ。最近は特別列車の運転に使われている。
 
     
 
     
ブロッケン山頂までは一般車は乗り入れが禁止されていて、列車で行くしかない。途中のシェルケ駅までレンタカーで乗りつけ、発車風景を撮影した。列車はここから山頂駅までの13.6kmで標高差440mを登って行く。
山頂駅は標高1125mにあり、ドイツの鉄道で最高地点である。
案内用パンフレットの時刻表には各駅の標高が表示されていた。
  シュタイネルネ・レンネからドライアンネンホーネまでの区間は、線路が森の中で近づくことが出来ないが、林道を暫く歩くと開けた風景の中を走る列車を見渡せる場所がある。
1931年にシュヴァルツコップ社で3輌だけ製造された形式のひとつ99型222号機が現存しているが、ドライアンネンホーネ駅の先でブロッケン行き列車を待っていると、この機関車が牽いてきた。
 
     
ドライアンネンホーネ駅12:30、ブロッケン行きの列車が発車して行く。左側で発車を待つのは12:33発のノルトハウゼン方面行き列車。更に右手のホームには、列車の陰で見えないが反対方向のヴェルニゲローデ行き12:36発の列車が止まっている。蒸気機関車が牽く列車が3本同時にこの駅にいるゴールデンタイム。   朝ノルトハウゼンのホテルを出て、ハルツの駅を見に行こうとすると、路面鉄道区間にディーゼルカーが止まっていた。この車輌はハルツの本線に入り、長躯ヴェルニゲローデまで走って行く。そして帰路は蒸機機関車が牽引する列車の最後尾に連結されて戻ってくるのだが、その姿を夕方シュタイネルネレンネで見た。
 
     
ヴェルニゲローデ機関区で点検を受ける機関車   シュタイネルネレンネを出る列車の最後尾に連結されたディーゼルカー。ここは6年前に来た時にこのページの上の写真を写した場所だが、今回は草木が生い茂っていて昔のようなショットにはならなかった。
 
東部の路線の起終点はゲルンローデだったが、ここで接続していたドイツ鉄道(DB)の支線が2004年1月に廃止され、ハルツの列車とDBとの乗り換え接続ができなくなった。そこでハルツ狭軌鉄道は廃止された区間を譲り受け、標準軌の線路を撤去して1000mmゲージで敷設し直し、DBとの接続駅ケドリンブルクまでの区間を2006年に延長開業した。
 
現役機関車のメニューに戻る

  

ドイツ ハルツ狭軌鉄道