北部ドイツを疾走した03.10形
2011年7月〜8月にかけて、ドイツの急行旅客用花形機3気筒式の03.10形が、北部ドイツで旅客列車を牽いて疾走した。Ulmer Eisenbahnfreunde e.V.(ウルム鉄道愛好家協会)が企画した団体専用列車だが、もともと2010年2月に見たチューリンゲンの森スペシャルのように、UEFが保存する01.1066号機に牽引させる予定だったところ、その保存機が調子を崩し修繕のために工場に入らざるを得なくなった。
そこで登場したのが、DB(ドイツ鉄道)がHalleで保存していたこの03.1010号機だった。7月後半の2度の週末と8月6〜7日にそれぞれ別の区間で特別列車を牽いて本線を疾走した。
8月6日(土)はハンブルグの北西にあるItzehoe駅を6:05に発車し、ハンブルグ、Schwerinを経てRostock中央駅までの約280kmを5時間かけて走行した。
 
     
この日、Schwerinの南方にあるHolthusenという小さな駅で9時から45分間停車するという情報を得ていたため、先ずSchwerin東方で当たりをつけていた撮影予定地を下見した後でこの駅に駆けつけ、踏切で待っていると、ピカピカに磨かれた03.10形が9輌編成の列車を従えてゆっくり進入してきた。   列車は構内東側の側線に停車し、これに並行した道路から消防車が機関車に給水することになっていた。ところが消防車が水源の位置の関係で機関車の横まで行けなかったらしく、03.1010号機が一度列車から離れ、駅構内の反対側のポイントを渡って消防車の近くへ移動することになった。
 
     
踏切で待っていると直径2メートルのスポーク動輪を廻しながら黒い巨体が目の前を通過して行った。進路の先に小さく黒く見えているのが客車の最後尾だ。   消防車はこの踏切の少し先で線路に並行する道路に止まっていた。03.1010号機は1967年に燃料を重油専燃に改造されたが、1981年に再び石炭焚きに戻されている。
 
     
給水作業を見ることなく、この日最初の撮影地へと急いで移動した。ペンツィンという村の近くで線路に沿った道に車を止め三脚をセットした。遠くに小さく姿を見せた列車は、予想通りのスピードで、アッと言う間に眼の前を通過して行った。   見上げるような高さの運転室窓から沿線風景を眺めていたのは、親子ほど歳の離れた乗務員だった。現役時代を知っている指導機関士と、後を継いでいる機関助士だろうか。
 
     
この日の特別列車はナローゲージのモリー鉄道の開業125周年記念行事に合わせた運転で、モリー鉄道の起点駅であるBad Doberanまで行くことが予告されていた。しかし3日前に公表された最終時刻では手前のRostock中央駅止まりとなり、夕方折り返して朝の始発駅まで戻ることになっていた。
夕方の列車は、かつて貨物扱いをしていた駅の廃止された構内のような場所で待っていると、9輌編成の列車を軽々と牽いて03.1010が疾走して行った。この機関車はシリンダーが3本ある03.10形の10号機で、1940年ボルジッヒ社製。
  普段はDB(ドイツ鉄道)が運営するニュールンベルグ交通博物館のハレ支所に保存されているが、今回は01.10形のピンチヒッターとしてUEFが企画する団体専用列車を牽引しているのだ。滅多に見られない姿を見ることができた。
キャブ横のナンバーの上には旧東独国鉄のプレート、下には鉄道研究開発部(VES -M- Halle(S))のプレートが付いていた。博物館のハレ支所では、旧東独国鉄の車両を展示しているほか、VES -M 関連品の展示も始めており、この機関車がかつてそこで高速走行試験等をしていた縁の地である。
 
     
この日ハンブルグに駐泊した03.1010は、翌7日朝UEFの団体専用列車を牽いてハンブルグを出発し、南へゲッチンゲンまで走行した。列車自体はそこで交替する電気機関車に牽かれてシュトゥットガルトまで運転されたが、03.1010は仕事を終えてハレに単機回送で帰って行ったようだ。
この日はアウトバーンを使って列車を追いかけ、3か所で撮影することが出来た。
先ずハンブルグ郊外のAshausen付近。予定していた場所に行ってみると工事中で撮影場所としてはNGと解り、慌てて線路に近づける場所を探した結果、木立をバックにした直線区間を見つけて撮影することが出来た。小雨が降り出しそうな天候の下、白煙を上げながら疾走して行った。上下
 
3個あるヘッドライトのうち下の2個のちょうど中間辺りの位置に、この機関車の3本目のシリンダーのピストン尻棒のカバーが突き出ている。これが3気筒式機関車の証拠。  
     
  すぐに撤収してアウトバーンで先回りしたのはLehrte駅南方。この辺りでは少し青空が見えていたが、6輌の軽い編成を牽いて軽快に走り抜けていった。ここでは地元の鉄道青年が父親と一緒に撮影に来ていた。給水停車するLehrte駅に到着した姿を撮影しようとしたら、手前の線に電車が止まってしまって見えなくなったと言っていた。
彼はこの機関車を「ヌル・ドライ・ツェン・ツェン」と呼んでいた。ドイツ語で「0-3-10-10」。
     
Lehrteを撤収した後も急いでアウトバーンに乗り、イチかバチか3カ所目を狙った。ノルトハイム南方のズトハイムという村の近くで道路がDB本線をオーバークロスする場所がある。とりあえずそこまで行って近くを探し回ると、すっきりとした線路際に車で近づくことができた。ゲッチンゲン到着予定は13時16分でそれから想像すると、まだ列車はここを通過していないはず。カメラをセットして待っていると、暫くして遠くに黒い影が見え、だんだん大きくなってきた。
今回の2日間の撮影では停車中の機関車の近くでじっくり撮影する場面は無かったが、03.10形が本線を全力疾走する姿は圧巻だった。
 
 
     
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