ヨルダン ヒジャーズ鉄道 シリアへ向けて(撮影2009年9月)

イギリスの旅行社が企画した蒸機ツアー客がヨルダンから国境を越えてシリアに向かう日の朝、アンマンの駅構内で蒸気圧を上げた85号機は、ゆっくりバックして給水ポートの方へ移動した。ヨルダンのヒジャーズ鉄道85号機は1953年に日本車輛で製造された機関車。
機関士と助士がホースの水で汚れを落としている。重厚な給水塔の横には3日前にこのツアー客のチャーター列車を牽いた23号機のテンダーが見えている。

アンマンを出て北に向かうとすぐ、ザルカ川の渓谷に沿って走る区間がある。周囲は岩山ばかり。
85
号機の煙室扉の下とテンダーの側面には白い塗料で文字と模様が描かれていた。前年2008年に開業100周年記念事業として、特別列車がヨルダン南部のアカバからワジラムまでの区間で運行され、観光客を載せた客車を牽引した時に描かれたもの。

アンマン近郊のザルカ市に入り、石造アーチ橋の上を通過してザルカ駅に向かう列車。ヒジャーズ鉄道には100年前に開通した頃に造られた石造橋が随所にある。ザルカ駅の先に補修工事で通行不能になっている橋があり、列車はザルカ終着。ツアー客約30名はその次のサムラ駅まで大型バスで移動した。

サムラ駅で待っていたのは、シリアで保存されている91号機。1907年にドイツのハルトマン社で造られた機関車で、この日早朝にシリアから客車を牽いて国境を越え、ヨルダンのサムラ駅まで来て乗客を待ち受けていた。バスを降りたツアー客が乗り込み、荷物も列車に積み終えると、軽快なブラスト音を残して北へ向かって発車して行った。
シリア国境までの荒涼とした風景の中、雄大なオメガ形のカーブを登って行く列車を撮影できる場所がある。100年以上前に造られた機関車が、古い客車を牽いてS字カーブを通り抜けていく。カメラの方向を右に向けると、一度岩陰に隠れた列車はオメガカーブの後半を汽笛を鳴らしながら登って行き、やがて岩陰に消えて行った。
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