エジプト ナイルデルタの軽便鉄道(撮影1992111日)

サダカの駅構内は、毎週土曜日は朝市の広場と化していた。駅を発車した60号気動車は、朝市で買った物を頭に載せて帰る女性達を見ながら、目の前を通過して行った。やがて踏切を横切って次の停車場に到着する。緑色の丸窓気動車は、19921月の営業廃止直前まで活躍していた。
(オリジナル映像はVHSテープ)

最後まで営業運転を続けていたマンスーラ〜サダカ間の廃止が近くなった土曜日、ビデオカメラを持って車で並走した。この沿線で撮影を始めた頃は、未舗装道路の凹凸が激しく車で並走などできなかったが、舗装が進み撮影ができるようになった。道路の整備が鉄道廃止の原因にもなっていたのは皮肉ではある。

遠くから来る列車を正面から撮影できる場所を見つけて待っていると、波打つレール上を左右に車体を大きく揺らしながら近づいて来て、脱線もせずに通過して行った。ゲージは1000mm
プーッという警笛の音は、日本では昔自転車で豆腐を売り歩いていた豆腐屋のラッパのようだ。

集落の中に停車場があった。気動車が停まると乗客は跳び下りるしかない。この列車で通学する女子学生達が、おしゃべりしながら通り過ぎていった。鉄道廃止後はピックアップトラックの荷台に乗って通学するのだろうか。

マンスーラ駅へ向かって走る60号気動車。ナイルデルタ地帯は灌漑用水路が随所に整備されているが、女性達が洗濯や食器洗いをしている風景も日常的だった。
気動車は普段は箱形の木造客車を牽いて走っていたが、営業廃止間近かのこの日は無蓋車に客を乗せて牽いていた。 

60号気動車を追ってマンスーラの駅に着くと、もう1輌同じ形の66号がサダカ行きの列車として発車準備をしていた。車内に入れない乗客を屋根に乗せ、夕陽を浴びて出発して行った。
7に見える文字はアラビア語で6の表記。
(撮影したオリジナル映像はVHS-Cテープ)

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