エジプト南部のルクソールやアスワンには、古代王朝時代の神殿や王墓など壮大な遺跡が集積していて世界的な観光地として有名だが、この地域は砂糖キビの生産地でもあり、収穫時の運搬用専用鉄道が、畑の中に網の目のように敷かれている。   この地方ではサトウキビの収穫時期は毎年3月から5月ぐらいまでで、小さなディーゼル機関車が砂糖キビを満載した貨車を連ねて、工場に向けて運搬していく姿を見ることができる。
1991年3月〜4月に訪問した時の風景を紹介する。
 
     
ルクソールの北方、ケナ県クスにある製糖工場は、ナイル川西岸に専用鉄道のネットワークを持っていて、収穫期になると毎日、ディーゼル機関車が空の貨車を畑のあちこちに数輌ずつ置いて回る。線路のゲージは2フィート。   ラクダと人力で収穫したサトウキビを、側線に止めた貨車に積み込んでおくと、ディーゼル機関車が末端の方から次々に連結して、工場へ向かって牽いて行く。工場に近づくにつれて列車はだんだん長い編成になっていくのだ。
 
     
 
エジプトではロバが庶民の乗り物。エジプト南部は上(かみ)エジプトと呼ばれているが、この地方の男は頭に白い布を巻いている。
列車は途中の側線に止められた貨車を次々に連結しながら工場ヘ向かう。
  畑からこの側線までは砂糖キビをラクダの背中に乗せて運んで来るが、ここで男が肩に担いでハシゴを登って貨車に積み上げていく。

機関車が貨車を連結し、列車に仕立てる準備をしている。
 
     
 
クスの製糖工場に近い畑の中で待っていると、次々に砂糖キビを満載した列車が通過して行った。色々な方向の支線から来る列車が、最後はここを通って工場へ向かっていくのだ。
クス工場の機関車は、形態は同じだが、緑だけでなく赤や黄色の塗装のものもあった。
  緑色の機関車が牽く長い編成の列車が、製糖工場の入口に近づいて来た。

工場のゲートを通過する列車。貨車は小さな車輪を履いた簡単な構造だが、脱線もしないでよく走るものだ。
 
     
 
この機関車は、確か東欧の国で製造されたものだった。
エジプト国鉄本線の線路とクロスする砂糖キビ専用鉄道のナローゲージのレール。写っている貨車はラクダ運搬専用貨車だ。上の窓からラクダが顔を出した列車が走っている姿は滑稽だ。
  専用線はこの先でエジプト国鉄本線の下を通過するため、線路が半地下になっている。
ルクソール西岸の遺跡へ向かう道路は、このナローゲージの線路を踏切で横切るので、観光に行く機会があれば注意して見ていて欲しい。
 
     
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エジプト南部の砂糖キビ鉄道(その1)
クス工場専用線