インドネシア アンバラワ鉄道博物館 (1987年)
インドネシアのジャワ島中部、ボロブドール遺跡で有名なジョグジャカルタから北へ約50kmの所にアンバラワという街がある。ここに来る鉄道の支線は廃止になったが、駅構内の敷地を使って1970年に鉄道博物館が開業し、25輌の蒸気機関車を屋外展示している。
1987年2月15日にここを訪ねた。背の高い椰子の木のもと、広々とした構内に蒸気機関車がバラバラの方向を向いて短いレールの上に展示されていた。
”KERETA API”はインドネシア語で鉄道のこと。
 
   
構内を見渡すと、大型の機関車が目を引いた。   CC50型は動輪3軸が2組あるマレー式という強力な構造の機関車。1927〜28年に30輌がオランダとスイスから輸入された。
 
     
B52型という機関車は変わったデザインだった。B5210号機はドイツのハルトマン社1911年製。   石炭と水を積んだテンダーが、運転室と一部を共用している。
 
     
B20型は路面鉄道用のスチームトラム。B2014号機はイギリスのベイヤー・ピーコック社1905年製。
保管/展示のページで、スラバヤ駅前に保管されたB12型を紹介している。インドネシアのスチームトラムはこの他にも数形式が運転されていた。
  インドネシアの蒸気機関車の形式付番は、日本の国鉄と同じルール。動輪の軸数でB、C、D、テンダー式が50台、タンク式が10台の形式を組み合わせる。
C51と言えば日本では昭和初期の特急列車用花形機だったが、こちらのC51型はズングリしていた。
 
     
 
日本でこの形式付番を始めた昭和初期にはマレー式が既に現役を退いてたため、日本にはBBやCCという形式の機関車は存在しない。インドネシアのBB10型は動輪2軸2組と従輪1軸のマレー式。   動輪が6軸あるとF型となるが、世界中にもほとんどない珍しい形式F10型。先輪と従輪が1軸ずつ配置されている。
1912〜20年に28輌がオランダとドイツから輸入された。
 
     
インドネシアのD51はドイツのハルトマン社1920年製。ところが変わった経歴を持っている。もともとこの形式10輌は、オスマン帝国がヒジャーズ鉄道向けにハルトマン社に注文したものだったが、アラビアのロレンスの活躍もあってアラブ軍がシリアのダマスカスを攻め落とし、オスマン帝国がアラビア半島から撤退したため宙に浮いてしまい、インドネシア鉄道向けに振り向けたものだ。
元ヒジャーズ鉄道の機関車は現役機関車のページで紹介している)
 
     
  機関庫の中にB25型が保管されていた。これは動態保存状態で、予約して料金を払えば約10kmの保存区間を、客車を牽いて運転していた。
この機関車は線路中央の歯車レールに噛み合わせるラック用歯車を備えていた。保存運転をする区間にも急勾配のラック式線路がある。

B2503号機はドイツのエスリンゲン社1902年製。
 
     
C20型01号機。ドイツのハルトマン社1902年製。   C28型21号機。ドイツのヘンシェル社1921年製。
 
     
D10型07号機。ドイツのハルトマン社1914年製。   C18型01号機。ドイツのハルトマン社1901年製。
 
     
  アンバラワの鉄道博物館は、現在も同じような展示を続けていて、B25型機関車による特別運転も時々行われているらしい。
しかも最近は、もとスマトラ鉄道のE10型ラック式機関車もここで動態保存されていて、両方の機関車が同じ日に運転されることもあるという。
但し、同じラック式でもスマトラとここでは仕様が違うらしく、E10型はこちらのラック区間には入って行けないという。
 <アンバラワ鉄道博物館パンフレット掲載地図>    
     
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